アンドロイドは電気羊の夢を見るか
最近、人工知能周辺が熱いですね。記事タイトルはフィリップ・K・ディックの小説から。アンドロイドと人間の違いに迫る名作SFです。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
- 作者: フィリップ・K・ディック,カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03/01
- メディア: 文庫
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(本日は浦沢直樹のPLUTOのネタバレを含みます。お気になさらない方のみ、読み進めください。)
先日、Googleが開発した人工知能である「AlphaGo」が囲碁のトップ棋士に勝利したことが大きなニュースとして取り上げられました。
一方で、Microsoft社が開発している人工知能が学習の結果、人種差別的な発言やヒトラー礼賛発言をしだすようになったので公開停止になりました。
また、AIロボットのソフィアさんが「人類を滅亡させるか」という問いに「Yes」と答えたというニュースも近辺にあり、ニュースになっています。
…と、私が石黒先生のアンドロイドに関する授業の動画を楽しく見ている間にこの界隈でもいろいろとあった訳ですが、世間的に見ても人工知能は今熱い視線を浴びています。
私も付け焼き刃程度の知識しかないのでざっくりとしか書くことができませんが、そこには「データ量の増大」と「ディープラーニング」という2つのキーワードが関わっています。
1.データ量の増大
人工知能は何かを学ぶのに「先生」と「お手本」が必要です(人間もそうでしょうが)。例えば、「犬ってどんなもの?」というのを学ぶために「足が4本あって、耳があって、ワンワン鳴いて…」と特徴を教えてあげた上で、たくさんの動物の中から「これが犬だよ」「これは犬じゃないよ」と教えてあげます。その数を増やしていくと、段々人工知能も犬がわかるようになります。
今、インターネットの普及と共に世の中の色んな物がIT化し、様々な情報がデータとなりました。世の中のデータ量は毎年40%ずつ増加していくという予測も立っており、今後データ量は増加の一方です。
上の例では「犬」でしたが、世の中のデータ量が爆発的に増えることで、あらゆるものや考え方に対する「お手本」が世の中に増えていったのです。
2.ディープラーニング
最近、人工知能業界で起こった画期的なブレイクスルーが「ディープラーニング」です。これはすごく雑に説明すると人工知能が「先生」無しに自分で学習ができるようになる技術なんです。
これまでは「先生」(=人間)が学習対象の特徴を大変細かくひとつひとつ人工知能に教えていたのですが、世の中の「お手本」の量が膨大になったので、そこから人工知能が自動的に「犬ってこんな特徴があるのかな。大体そういう特徴があるような気がする」と学べるようになったのです。
「お手本」が大量にあり、「先生」無しで学習ができるようになった、この2点で人工知能は爆発的に進化を遂げている、ということなんです。
さて、今、株式会社メタップスの佐藤社長が書いた本を読んでいます。
まだ冒頭だけなんですが、これが面白い。点と点をつなぎ、線として技術発展の流れを読めば未来を予測することができる、という話なのですが、その中で「テクノロジーの本質」を以下のようにまとめています。
1.テクノロジーは人間の持つ機能の拡張である
2.テクノロジーが社会に普及すると、人間側がテクノロジーに合わせて生活スタイルを適応させる
3.テクノロジーは世の中に浸透して拡散していく
読んでいる中で、「人間の持つ機能の拡張」という観点から、人工知能周りのテクノロジーは人間のどんな能力を拡張していってるだろうという妄想が進みました。
(たぶんこの後佐藤社長の考えも出てくるのでしょうが、一旦妄想が進んだので書いておきたい。)
「記憶力・知識」→「名前をつけて保存」すればバッチリ保存。今や形にして保存してあれば、他の人の記憶を共有できる時代になりました。Amazonの「おすすめ商品」なんかは関連付けによる「思い出し」を拡張したものでしょう。
「意思決定」→これまでは「先生」がどうするかを決めていましたが、まさしく今、人工知能が成しつつあることです。
こうして、まだ機械にできていないことって何だろう…という話になると、「創造性だよ!」という話になるんですが、先日興味深い技術が出てきました。
1枚目の画像から画風を学習して、2枚目の画像をその画風でレタッチするという人工知能です。これほんとすごい。
少し前には、人工知能が作曲するサービスなんていうのも出てきています。
創造性関係では、過去の蓄積からデータを学んでそれらしいものを作る、ということで0から1を作るというよりは0.5を生み出してるかなぐらいですが、それでも十分に可能性を感じさせるなあと思います。
人工知能が思考の上でも、創造性の上でも0から1を生み出す。わくわくしますね。
私が大好きな作品に浦沢直樹のPLUTO (プルートウ) という漫画(手塚治虫の鉄腕アトムが原作なんです)があるのですが、その中でも特に好きな場面があります。
作中に出てくる博士が、世界で一番頭の良いロボットを作ろうとして、全人類の思考や性格のデータをインプットしたロボットを作るのですが、それが結局目を覚まさなかった、という話です。ロボットの中でそれぞれの思考が「俺が正しい」「いや、私だ」と喧嘩してしまい、どれが唯一、という答えが出ないため、永遠に演算を続けているから目を覚まさないのです。なので、その顔を見るとずっと顔が変わり続けている。最初にこれを読んだ時、衝撃的でした。
データを集めても、何を正として未来への判断をしていくか、というのはその人の志向性や好みによるところで、この世の中に唯一の回答がある訳ではないのですが、人工知能が自立学習を始めた今、同じように個性という形で育っていくのか、それとも別の形が生まれるのか、それが私にはとても興味深く思えます。目を覚まさなかったあのロボットが、目を覚ます時が来るんだろうなあ、って。
そんな感じです。
- 作者: 浦沢直樹,手塚治虫,長崎尚志
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/09/30
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